吠える思考と褒める思考

こんにちは!
ペットライフクリエイター獣医師MicVet です。
小動物臨床6年,ペットフードメーカなどで約1500件の動物病院を担当,動物病院スタッフ向けに毎日がちょっと楽しくなる情報発信中です。
このブログでは失敗した時に怒鳴る吠える思考と成功した時に称える褒める思考について考察します。
今回参考にした本はこちら
ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか? 文庫 (上)(下)セット
いつもピリピリ吠える思考

動物病院に一歩踏み入れると伝わってくるピリッとした空気。
そこは飼い主さんの間でも有名な厳しい指導で知られる動物病院でのこと。
診察室の奥から響いてきたのは怒鳴り声
そこは触るなっていってんだろうが!
どこ見てんだっ!
待合室にいる飼い主さんまでその張り詰めた空気が伝わってきます。
たまには褒めてあげないと潰れちゃいますよと言うと
褒めると調子にのってミスするから褒めるのは良くないんだ
と教えていただきました。
わかりにくい褒める思考

この前ケアレスミスをしてしまったんですけど
先生はなにも言ってくれないんです。
そう教えてくれたのは無口で無愛想,でも優しい先生と飼い主さんが言っていた動物病院で働く動物看護師さん
言葉がきつい先生に悩む方もいるというのに珍しいですね言うと
問題があると途端に無口になるので何がダメだったのかわからない時があるんです。ここがダメだって言ってくれればすぐに対処できるのに…
褒めても吠えても結果は同じ!?

失敗した時に叱るのと成功した時に褒めるのはどっちの方が効果的なのでしょうか?
この疑問に対して
ノーベル経済学賞受賞者ダニエル・カーネマン先生は興味深いエピソードを紹介しながら解説をしています。
それはダニエル・カーネマン先生がイスラエル空軍を対象にスキル強化訓練のために講義をした 時のこと
失敗を叱るよりも能力向上を褒める方が効果的だという心理学での実験結果にベテラン訓練教官からこんな指摘がありました。
うまくできた時にほめるのは人やその他の動物では効果があるのかもしれない。だが,訓練生に当てはまるとは思えない。
うまくできた時には褒める
ところが同じ事をさせるとたいていうまくできない。うまくできなかった時は叱る
すると次に同じ事をした時にたいていうまくいく。だから
ファスト&スロー ダニエル・カーンより抜粋 一部編集
褒めるのは良い,叱るのはダメだというのは現実的ではない。
この質問を受けてダニエル先生はこのように解説しています。
この教官は正しい。だが完全に間違っている。
褒めると次に失敗し,叱ると次に成功するは正しい。
これは平均への回帰という統計学でよく知られた現象である。
しかし
褒めると下手になり,叱るとうまくなるという推論は間違っている
平均への回帰

平均への回帰(へいきんへのかいき、または平均回帰、回帰効果)とは、1回目の試験結果が偏っていた(特別に良かった、悪かったなど)対象について2回目の試験結果(時間的には逆でもよい)を調べると、その平均値は1回目の測定値よりも1回目全体の平均値に近くなるという統計学的現象をいう。
ウィキペディアより引用
つまり
確率論で見た時には教官が叱っても褒めても結果は変わらないというのです。
極端に失敗した時
次は成功する確率が高い

極端に成功した時
次は失敗する確率が高い

確率の平均への回帰という視点で考察した時には
成功の次は失敗する可能性が高い
失敗の次は成功する可能性が高いは正しい。
褒めると下手になり
叱るとうまくなるという推論は間違い。
という統計学で見た時には興味深い現象が起こるのです。
吠える思考と褒める思考

熱心になればなるほど声が大きく感情的になることがあります。
ただ
冷静に理論的に成功と失敗の確率を考慮すると次のパフォーマンスのために気持ちよく過ごす環境を作ってあげる事が大切です。
まとめ
今回参考にした本はこちらです。
ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか? 文庫 (上)(下)セット
ノーベル経済学賞受賞者ダニエル・カーネマン先生がその経験と知識を惜しげもなく教えてくれます。
まるで講義を受けているかのような臨場感があり2,3ページ読むごとに新しい発見がある濃い内容です。
専門用語が多いので入門書としては重いかもしれませんがもしかしたらあなたの悩みを解決してくれるヒントが見つかるかもしれません。
今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
明日も新しい発見と楽しい時間をお過ごしください。