【新人獣医動物看護師向け】動物病院就職選び方症例貧乏スパイラルに注意

動物病院初診専門コンサルタントの傍らペット専門学校で非常勤講師をしています獣医師MicVet です。
年間約200時間以上講義でのべ500人のドッグトレーナーやトリマーそして動物看護師の皆様に獣医学を教えてきました。
このブログでは新人獣医師動物看護師が陥りやすい症例貧乏スパイラルについてご紹介します。
【獣医師動物募集】 ノア動物病院 【動物看護師募集】ノア動物病院
就活中の動物看護師へ動物病院就職前にチェックするべきポイント
症例貧乏スパイラルとは?

私が勝手に作ったある現象を表す言葉です。
そのある現象とは
長く動物病院に勤めているにもかかわらず充分な症例経験ができていない現象
のことです。
先日,歴史のある動物病院の院長からこんな話を聞きました。
うちで雇っている代診獣医師が来月から独立して新しい動物病院を作ると言っているのだけれど去勢手術すらもやらせたことがない。
一人でやっていけるのか心配だ。
というものでした。
その病院の診察件数は1日平均5件,ほとんど院長がメインで診察していました。
新人獣医師は1日5件の診察で例えば3年その動物病院で修行したとして
1日5件×260日(週休2日だとして)×3=3900件
臨床経験3年めにして診療経験件数3900件となります。
一方で1日100件の外来がある大型動物病院に努めている新人獣医師は院長一人では診療をこなせないので少なくとも1日20件は半ば強制的に診療することになります。
1日20件×260日(週休2日だとして)×3=15,600件
臨床経験年数3年めにして診療経験件数15,600件となります。
ざっくり,考えても臨床経験件数で見た時に同じ臨床経験3年でも4倍もの差があるのです。
それに加えてその動物病院ではほとんど院長がメインで診療していたため正確には診療経験件数ではなく,診療補助件数が3900件となります。
これでは本人はもとより,送り出す院長としても心配の種はつきません。
症例貧乏スパイラルがスパイラスな理由

そしてその動物病院院長はこんなことをつぶやくのです。
症例経験が少ないから診察を任せられない。
彼は調剤しかしたことがないんだ。飼い主に問診することすらできない。
というのです。
経験した症例数が少ない→だから任せられない→症例経験を得られない→
経験した症例数が少ない→・・・
という負のスパイラルにおちいっていたのです。
前職では大小問わず様々な動物病院を見る機会が多く,この可愛そうな新卒獣医師看護師の話を耳にする機会が多々ありました。
そして私はこの残念な現象を症例貧乏スパイラルと勝手に命名することにしたのです。
症例貧乏スパイラルは誰のせい?

別の日
今度はその動物病院の代診獣医師から相談を受けました。
今,開業に向けて準備をしているのだけどどんな動物病院を作ればいいのか迷っているとのことでした。
現在イメージしている動物病院はどんな動物病院ですか?
私は訪ねてみました。するとこんな答えが返ってきたのです。
そこそこ,暇で稼げる動物病院 がいい。
そこで,こんな質問をしてみました。なぜ今の動物病院に就職したのですか?
そこそこ,暇で稼げる動物病院 だったから。
ある意味,筋が通っていて一貫性がありました。
質より量?量より質?

その獣医師は症例経験数が少ないのは明らかでした。
しかし,
担当できる症例数が限られていたからこそ抜きん出て良い所がありました。
それは
1匹の動物ではなく動物の飼い主を含めた1家族の問題として病気を捉えていた事です。
そこで,予約制の動物病院で1件1件のご家族に合わせたパーソナルペット診療を提案しました。
そして無事に地域密着型動物病院を開業することができました。
自分のビジョンを明確に

診療技術も大事だけど独立したいので経営にも関わりたい!
開業する気はないからライフスタイルに合わせて働きたい!
などなど
ご自身のビジョンを明確にすることで就職先の選択をスムーズにすることができます。
迷っているなら選択の幅を広げる

自分のビジョンがわからない。
とりあえず臨床経験してから将来のことを決めたい。
という方には症例数が多く,長期勤務可能,しかも開業することもできる
という選択の幅が広い大型動物病院を最初の就職先におすすめします。
あの○○動物病院に努めていたなら間違いないね!
と同業者に言われるようなマルチ大型動物病院を最初の選択として選ぶとその後のライフスタイルに合わせて働き方を決めやすいです。
百聞は一見にしかず,まずはインターン実習の準備から始めましょう。
今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
素敵なご縁があるといいですね!